「どんなストレッチ方法があるのか?」と疑問に思う方も多いと思いますが、ストレッチングは種類によって得られる効果が大きく変わります。
今回は、ストレッチングを始める前に知っておきたい、その本質的な効果と状況に応じた使い分けについて解説します。
1. ストレッチングの定義と基本的な効果
「ストレッチ(Stretch)」は「伸ばす」「引っ張る」という意味を持ち、「ストレッチング」はそれらの「動作」そのものを指します。
同じ姿勢を取り続けた後に「身体を伸ばす」「あくびをする」といった動作も一種のストレッチングであり、これらは血流改善の効果があります。
ストレッチングを適切に行うことで、以下のような多くの効果が期待できます。
- 関節可動域の維持・向上(柔軟性の獲得)
- 血液循環の向上
- 疲労回復の促進
- リラクゼーション効果
- 怪我の予防
- 痛みの軽減
- 筋肥大の促進(継続的な実施による)
- 筋委縮の改善
血液循環を促し、疲労回復へ
ストレッチングによる筋肉のポンプ作用は、血流を促進します。この血流増加によって、筋弛緩に必要なカルシウムや、エネルギー源となる**アデノシン三リン酸(ATP)**の生成が活発化します。
補足: ATPは糖質(炭水化物)から作られるため、特に疲労回復目的の場合、消化の良い糖質を摂取するタイミングも重要になります。アミノ酸やクエン酸の摂取も、疲労回復のメカニズム(クエン酸回路)を活性化させる目的があります。
このように、ストレッチングによる血流改善の促進は、運動前の準備状態を整えることと、運動後の疲労回復を促すことの、両面の効果が期待できます。
2. 運動パフォーマンスを考慮したストレッチングの使い分け
すべてのストレッチングが運動前の準備に適しているわけではありません。特に瞬発的に高い収縮力を発揮するスポーツでは、ストレッチングの種類を間違えるとパフォーマンスが低下する可能性があります。
❌ 運動直前に避けるべきストレッチング
持続的に筋肉の張力(筋肉が伸びた状態)に変化を与える静的ストレッチング(スタティックストレッチング)を長時間行うと、ストレッチング直後は以下のような現象が起こる可能性があります。
- 筋収縮力の低下
- 筋収縮速度の低下
- ジャンプ力やダッシュ力の低下
これらのパフォーマンスレベルの低下を防ぐため、運動直前は静的ストレッチングを控えめにするか、避けるのが賢明です。
✅ 運動直前に推奨されるストレッチング
動的なストレッチング(ダイナミックストレッチングやバリスティックストレッチングなど)を用いて、関節を動かしながら筋肉を刺激することで、神経・筋肉系の興奮性を高め、運動に適した準備状態を整える工夫が必要です。
3. 日常的なストレッチングによる効果
試合前後の「使い分け」とは別に、日常的なストレッチングを継続することには大きなメリットがあります。
継続的にストレッチングを行うことで、筋収縮力・収縮速度の向上、ジャンプの高さやダッシュ力などの基礎的なパフォーマンスが向上します。
これは、ストレッチングによる筋刺激が細胞内でタンパク質合成を引き起こし、筋繊維の肥大に関係すると考えられているためです。
最後に
私たちは、整骨院での施術やトレーナー活動において、クライアントの状況に応じたストレッチングの強度や方法を使い分けています。
- 運動不足の方や身体の硬い方: 持続的でやや強めのストレッチングで柔軟性の改善と血流促進を促します。
- 試合直前の選手: 競技のプレー時間を考慮し、控えめ、あるいは動的ストレッチングを優先します。
ストレッチングの種類と効果を知ることで、あなたの目的に応じた最適なケアが可能になります。


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