肩に痛みを感じ、「もしかして四十肩かな?」「いや、もう五十肩の歳だし…」と悩んだ経験はありませんか?
「四十肩」と「五十肩」という言葉は、私たちの日常でよく耳にしますが、この二つの違いについて、明確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
結論から言うと、「四十肩」と「五十肩」は、医学的には同じ病態を指す俗称です。
「肩関節周囲炎」が正式名称
一般的に「四十肩」「五十肩」と呼ばれる症状の正式名称は、「肩関節周囲炎」といいます。これは、肩の関節とその周りの組織(関節包、腱、滑液包など)に炎症が起き、痛みと動きの制限が生じる病気の総称です。
なぜ「四十肩」「五十肩」という呼び方があるかというと、その名の通り、40代から50代にかけて発症しやすいためです。
ただし、近年では30代や60代以降で発症するケースも珍しくありません。年齢によって呼び方が変わるだけで、その病態や症状、治療法に本質的な違いはないのです。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の主な症状
四十肩・五十肩の症状は、大きく分けて以下の3つの時期を経て進行することが一般的です。
炎症期(急性期)
特徴
肩を動かすと強い痛みが走り、安静にしていてもズキズキとした痛みを感じることがあります。特に、夜間に痛みが強くなる「夜間痛」が特徴的で、寝返りや寝ている姿勢によって目が覚めてしまうこともあります。
期間
個人差はありますが、数週間から数ヶ月続くことがあります。この時期は、無理に動かすと炎症が悪化するため、安静にすることが重要です。
拘縮期(慢性期)
特徴
炎症期の激しい痛みは徐々に和らぎますが、肩の動きが悪くなり、可動域が著しく制限されます。「腕が上がらない」「服を着るのがつらい」「髪を洗うのが困難」など、日常生活に支障が出やすくなります。
期間
数ヶ月から1年程度続くことがあります。この時期は、固まってしまった関節を少しずつ動かし、可動域を広げるリハビリが中心となります。
回復期
特徴
痛みがほぼなくなり、徐々に肩の動きが回復してくる時期です。しかし、完全に元の状態に戻るまでには時間がかかることもあります。
期間
半年から数年かかることもあります。地道なリハビリを続けることで、機能回復を目指します。
四十肩・五十肩の主な原因
四十肩・五十肩の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、一般的には加齢に伴う肩関節周囲の組織の変化が主な要因と考えられています。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
関節包や靭帯の柔軟性の低下
加齢により、肩関節を包む関節包や、関節を安定させる靭帯などが硬くなり、炎症を起こしやすくなります。
腱板の変性
肩の動きに関わる腱板(けんばん)と呼ばれる筋肉の腱が、加齢により変性し、炎症を起こすことがあります。
血行不良
肩関節周囲の血行が悪くなることも、炎症や組織の回復を遅らせる要因となります。
使いすぎや特定の動き
特定の動作の繰り返しや、普段あまり使わない動きを急に行うことなども、発症のきっかけとなることがあります。
糖尿病や甲状腺疾患などの合併
特定の全身疾患を持つ方は、発症リスクが高いと言われています。
治療法と大切なこと
四十肩・五十肩の治療は、主に保存療法が中心となります。
薬物療法
痛みが強い炎症期には、非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服や外用薬、場合によってはステロイド注射などを用いて痛みを抑えます。
物理療法
温熱療法や電気療法などで血行を促進し、痛みを和らげます。
運動療法(リハビリテーション)
痛みが落ち着いてきた拘縮期以降は、肩関節の可動域を広げるためのストレッチや、周囲の筋力を強化する運動が重要になります。理学療法士の指導のもと、無理のない範囲で継続することが大切です。
生活習慣の改善
肩に負担をかけない姿勢や動作を心がけ、冷やさないようにすることも大切です。
最も大切なのは、自己判断せずに整形外科を受診することです。四十肩・五十肩と似た症状を示す病気(腱板断裂や石灰沈着性腱炎など)も存在するため、正確な診断を受けることが適切な治療への第一歩となります。
まとめ
「四十肩」と「五十肩」は、どちらも「肩関節周囲炎」という同じ病気を指し、発症年齢によって呼び方が異なるだけです。
もし肩に痛みや動きの制限を感じたら、「歳のせいだから仕方ない」と諦めずに、早めに整形外科を受診しましょう。
適切な診断と治療、そして地道なリハビリを行うことで、つらい痛みを乗り越え、再び快適に腕を動かせるようになることを目指しましょう。
コメント