成長期に筋肥大(筋肉が太くなること)が起こりにくい、あるいは大人と同じようには起こらない主な理由は、ホルモン環境の違いと、体のエネルギーが「縦の成長」に優先的に使われるという点にあります。
1.筋肥大に必要なホルモンのレベルが低い
筋肥大を促す主なホルモンであるテストステロンの分泌量が、思春期前の成長期にはまだ低いことが大きな理由です。
思春期前
テストステロンは、主に男性の筋肉発達に深く関わるホルモンですが、思春期前の子供では分泌量が少ないです。
この時期の成長は、主に成長ホルモンとIGF-I(インスリン様成長因子-1)によってコントロールされており、これらのホルモンは骨の成長(身長の伸び)や神経系の発達に優先的に使われます。
思春期以降
思春期に入り第二次性徴が始まると、テストステロンの分泌量が急増します。これにより、初めて本格的な筋肥大が起こりやすくなります。
2.エネルギーと栄養が「身長の伸び」に優先される
成長期は、骨を長くし、体の土台を作る期間です。
食事から摂取したエネルギーやタンパク質などの栄養素は、生命維持活動の次に、骨端線での軟骨増殖や骨の石灰化といった「縦の成長」と、内臓や脳などの発達に最優先で使われます。
このため、筋肉細胞を肥大させるための余剰なエネルギーやアミノ酸が不足しやすく、筋力は向上しても、見た目上の筋肥大は起こりにくいのです。
3.神経系の発達が先行する
成長期の子供の筋力向上は、筋肥大ではなく神経系の発達によるものが大きいです。
子供の体は、脳から筋肉への指令の出し方(運動単位の動員効率)や、異なる筋肉間の協調性を高めることで筋力を向上させます。
つまり、筋肉のサイズ自体が大きくなるより前に、筋肉の動かし方が上手になることで力が強くなるのです。
成長期のトレーニングのポイント
成長期に筋肥大を目的とした過度な負荷(高重量)のトレーニングは、まだ未発達な骨端線や関節を損傷するリスクがあるため、推奨されません。
推奨される目的
筋肥大ではなく、神経系の発達、運動能力の向上、体幹の安定、適切なフォームの習得に重点を置くべきです。
適切なトレーニング
自重トレーニングや低負荷での反復、サーキットトレーニング、様々なスポーツを行うことが有効です。
成長期は、将来のスポーツ活動のための土台を作る大切な時期と捉え、無理なく全身をバランス良く鍛えることが重要です。



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