もしあなたが肩こりや腰痛で整骨院を訪れたとき、「骨盤が歪んでいますね」「体のバランスが崩れています」と言われた経験はありませんか?
そして、それを治すために施術を勧められたという方も多いでしょう。
しかし、一部の柔道整復師(整骨院の先生)や理学療法士といった専門家の中には、この「歪み」という言葉に懐疑的な意見を持つ人もいます。
一体なぜ、同業者の間で意見が分かれるのでしょうか?今回は、その理由を分かりやすく解説します。
1. そもそも「歪み」の定義が曖昧
「歪み」という言葉は、実は医学的に明確な定義があるわけではありません。
「骨盤の歪み」 と言っても、それが骨のねじれなのか、筋肉の張りの左右差なのか、姿勢の癖によるものなのかはっきりしません。
多くの患者さんは「骨が曲がっている」とイメージしがちですが、実際には骨格そのものが大きく曲がることは稀です。
したがって、施術者が「歪み」と呼んでいるものが、必ずしもレントゲンなどで確認できるような解剖学的なズレを指しているわけではないのです。
「歪み」という言葉は、患者さんの体の状態を感覚的に伝えるための、いわば**”便宜的な表現”**として使われていることが多いのが実情です。
2. 「歪み」と痛みの因果関係が不明確
多くの整骨院は「歪みが痛みの原因です」と説明します。しかし、これも科学的な根拠が十分とは言えません。
痛みの原因は、姿勢や体の使い方の癖、筋肉の過度な緊張、ストレス、疲労、精神的な要因など、非常に多岐にわたります。特定の「歪み」だけが、痛みの唯一の原因であるとは断言できないのです。
3. 不安を煽るような説明への懸念
一部の整骨院では、「この歪みを放置すると将来大変なことになりますよ」といった、患者さんの不安を煽るような説明をすることがあります。
もちろん、患者さんに体の状態を理解してもらい、施術の必要性を伝えることは大切です。しかし、医学的根拠の乏しい「歪み」を過度に強調することで、必要以上の不安を与え、継続的な施術を促すことにつながりかねません。
このような状況を懸念する同業者が「安易に歪みという言葉を使うべきではない」「患者さんに誤解を与える」と警鐘を鳴らしているのです。
では、私たちはどうすればいいの?
「歪み」という言葉に惑わされず、以下の3つのポイントを意識して整骨院を選び、利用することをおすすめします。
- 具体的な説明を求める
「歪み」と言われたら、「それは具体的にどういう状態ですか?」「なぜそれが痛みにつながっていると考えられるのですか?」と質問してみましょう。筋肉の左右差や姿勢の癖など、より具体的な言葉で説明してくれる先生は信頼できる可能性が高いです。 - 痛みの根本原因を一緒に考えてくれるか
単に「歪み」を治すだけでなく、日頃の姿勢や生活習慣についてのアドバイスをしてくれる先生を選びましょう。痛みは施術だけで治るものではなく、日々の過ごし方を変えることも大切です。 - 不安を煽られない
過度に不安を煽るような説明をされた場合は、鵜呑みにせず、セカンドオピニオン(別の専門家の意見)を求めてみることも検討しましょう。
「歪み」という言葉がすべて悪いわけではありません。それが患者さんにとって分かりやすい表現として使われている場合もあります。
しかし、その言葉の裏にある意味や、本当にそれが痛みの原因なのかどうかを冷静に判断する視点を持つことが、より良い施術と向き合う上で非常に重要です。
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