「人間、皆が皆、健康になりたいわけじゃない」――これは、健康に関わる仕事をしている人にとって、ちょっと耳が痛い話かもしれません。
なぜなら、私たちは無意識のうちに「みんな健康になりたいはずだ」と決めつけてしまいがちだからです。
「そこまでしないといけないなら、健康にならなくてもいい」という言葉を聞いて、「えっ!」と驚いた経験がある人もいるでしょう。
それはまるで、美容室に来たお客さんが「私、別にキレイにならなくてもいいです」と言ったり、スポーツジムの会員さんが「私、筋肉なんていらないんです」と言ったりするのと同じくらい、奇妙に聞こえるかもしれません。
ケーキ屋に行って「ケーキは結構です」と言うのと同じような違和感を感じるかもしれませんね。
しかし、本当にそうでしょうか?
目の前の「不健康」は、本当に「悪」なのか?
私たちが提供しているのは、あくまでも「健康」という一つの価値観です。しかし、世の中には様々な価値観を持つ人がいます。
例えば、仕事で徹夜続きでも、その仕事に大きなやりがいを感じている人。好きなものを好きなだけ食べて、ストレスなく暮らすことに幸せを感じている人。
彼らにとって、私たちが提案する「健康」は、時に自分たちの幸せを脅かすものに感じられることがあります。規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動…。これらは彼らの人生にとって、面倒で、窮屈で、時には「そこまでしてまで手に入れる必要がないもの」と捉えられてしまうのです。
「健康になりたくない」という言葉の裏には、「今の生き方を否定されたくない」「今のままで幸せなんだ」という強いメッセージが隠されているのかもしれません。
専門家として、どう向き合うか
私たちは、目の前の人が「健康になりたくない」と言ったとき、その言葉を額面通りに受け取るのではなく、その人の背景にある価値観や、本当に求めているものは何なのかを理解しようと努めることが大切です。
なぜ、そう思うのか?
どんな時に幸せを感じるのか?
健康になったら、どんなメリットがあると思うか?
まずは相手の気持ちに寄り添い、対話から始める。そうすることで、もしかしたら「健康」という言葉を使わなくても、その人が本当に求めているもの――例えば、「朝、すっきり起きられるようになりたい」「趣味をもっと長く続けたい」といった具体的な願い――が見えてくるかもしれません。
「健康」はあくまで手段であり、目的は人それぞれです。私たちは「健康」を押し付けるのではなく、その人の人生に寄り添うパートナーとして、最適なサポートを提案していくことが求められているのではないでしょうか。
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