料理や掃除といった家事の繰り返し作業が腱に負担をかけるのは、主に以下の3つの要素が関係しているからです。
1. 動作の「反復性」と「偏り」
腱鞘炎の最も直接的な原因は、同じ動作を何度も繰り返すこと(オーバーユース)です。
繰り返しの摩擦
料理や掃除では、同じ手首や指の動きを何十回、何百回と繰り返します。
料理
包丁で野菜や肉を「切る」動作、食材を「こねる・混ぜる」動作、フライパンを「振る」動作など、特定の腱(特に手首の尺側や橈側)が腱鞘の中で絶えず往復し、摩擦熱や炎症を引き起こします。
掃除
雑巾を「絞る」動作、掃除機を「押したり引いたり」する動作、床や壁を「こする」動作などは、手首をひねったり、固定したりしながら力を入れるため、腱に大きなストレスがかかります。
負荷の偏り
利き手や特定の指(例えば、親指や人差し指)に負荷が集中しやすく、一部の腱だけが疲弊してしまいます。
2. 「不自然な力の入れ方」と「手首の固定」
腱に炎症を起こしやすいのは、「強い力」を使うときよりも、「不自然な角度で力を持続させる」ときです。
ひねり動作(雑巾絞りなど)
雑巾を絞る、ペットボトルの蓋を開けるなど、手首を強くひねる動作は、手首の腱に大きなねじれの力が加わり、腱鞘との摩擦を増やします。
固定と圧迫(包丁、掃除機など)
包丁を握る際、指先や手首を一定の角度に固定して力を入れ続けます。この固定された状態が腱の血流を悪化させ、腱を休ませることを妨げます。
重い掃除機やモップを片手で操作する際も、手首が不自然に反ったり曲がったりした状態で重さを支え続けるため、腱が圧迫されて炎症が起こりやすくなります。
3. 「休憩の少なさ」と「疲労の蓄積」
家事は、途中で中断することが難しく、作業が長時間に及ぶことが多いのも負担を増す要因です。
連続作業
料理を一気に仕上げる、週末にまとめて掃除をするなど、休憩を挟まずに腱を酷使する時間が長くなると、腱鞘の炎症を鎮めるための回復時間が確保できません。
慢性的な疲労
疲労が蓄積した状態で作業を続けると、正常な動作ができなくなり、代わりに小さな筋肉や腱に無理な力がかかって、炎症が慢性化してしまいます。
これらの理由から、日常的で当たり前の家事であっても、手首や指に大きな負担をかけ、腱鞘炎の主な原因となります。


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