バレーボールは、ダイナミックなジャンプ、素早いダッシュ、急なストップ&ターンなど、膝に大きな負担がかかる動作が多いスポーツです。そのため、多くのバレーボール選手が膝の痛みに悩まされたり、怪我を経験したりしています。
今回は、バレーボールで起こりやすい膝の怪我の種類、その原因、そして具体的な対策と予防法について詳しくご紹介します。
バレーボールでよく見られる膝の怪我の種類
バレーボールの特性上、膝には様々な方向から強い力が加わります。代表的な怪我としては以下のようなものがあります。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
症状・・・膝のお皿の下(まれに上)に痛みが生じます。特にジャンプの着地時や、階段の昇り降り、走り出しなどで痛みが強くなります。
原因・・・ジャンプや着地動作の繰り返しにより、膝蓋腱(膝のお皿と脛の骨をつなぐ腱)に過度な負担がかかり、炎症や微細な損傷が生じます。太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性不足も大きな要因です。成長期の選手に多く見られます。
膝関節の靭帯損傷
種類
前十字靭帯(ACL)損傷
ジャンプの着地時や急な方向転換、ストップ動作などで、膝が捻じれたり、無理な力が加わったりして損傷します。受傷時に「ブツッ」という断裂音を感じることがあり、強い腫れと痛みを伴います。放置すると膝がガクッと抜けるような「膝くずれ」が起こりやすくなります。
内側・外側側副靭帯損傷
膝の左右への安定性を保つ靭帯です。膝の外側や内側からの衝撃、あるいは膝が過度に横に揺れることで損傷します。内側側副靭帯の損傷は、外側よりも発生頻度が高いと言われています。
後十字靭帯損傷
脛の前方からの強打など、膝が過度に曲がることによって損傷することが多いです。
原因・・・ジャンプの着地失敗、急な方向転換、相手選手との接触(まれ)、膝が捻じれる動作などが挙げられます。
半月板損傷
症状・・・膝の曲げ伸ばしの際に痛みや「ひっかかり感」を感じたり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態を引き起こすことがあります。
原因・・・体重がかかった状態で膝をひねる動作や、ジャンプの着地時に膝が屈曲しつつ回旋(ひねり)が加わることで、半月板(膝のクッションとなる軟骨)が断裂したり、亀裂が入ったりします。靭帯損傷を合併することも少なくありません。
オスグッド・シュラッター病
症状・・・脛の骨の膝に近い部分(脛骨粗面)が盛り上がり、運動時に痛みが生じます。
原因・・・主に成長期(10~15歳)の子供に多く見られるスポーツ障害です。大腿四頭筋が骨の成長に追いつかず、脛骨粗面に繰り返し引っ張る力がかかることで炎症を起こし、ひどい場合には骨が剥がれたりすることもあります。
膝の怪我の主な原因
上記で挙げた怪我に共通する主な原因は以下の通りです。
オーバーユース(使いすぎ)
ジャンプやダッシュ、ストップ動作など、膝への負担が大きい動きの繰り返しや、急激な練習量の増加、十分な休息不足。
筋力不足・柔軟性不足
大腿四頭筋の柔軟性不足・・・太ももの前側の筋肉が硬いと、膝蓋腱や膝関節に過剰なストレスがかかります。
体幹・股関節周囲の筋力不足・・・ジャンプや着地時に体幹が不安定だと、膝への負担が集中しやすくなります。股関節の筋力が弱いと、膝が内側に入る(ニーイン)などの不良動作につながります。
不適切なフォーム
ジャンプの着地姿勢・・・膝が伸びきった状態で着地したり、膝が内側に入る(ニーイン)ような着地は、膝への衝撃を増大させ、怪我のリスクを高めます。
スパイクやレシーブ時の身体の使い方・・・効率的でない身体の使い方は、特定の部位に負担を集中させます。
不適切なシューズや環境・・・クッション性が低いシューズや、硬い床でのプレーも膝への負担を大きくします。
バレーボール膝の怪我対策と予防法
痛みが出てしまった場合は、まず安静にすることが最も重要です。医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
同時に、再発予防とパフォーマンス向上のために、以下の対策を実践することが大切です。
1. 痛みのケアと医療機関への受診
RICE処置
痛みや腫れがある場合は、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)のRICE処置を行いましょう。特に運動後はアイシングを徹底することで炎症を抑えられます。
安静
痛みが引くまで無理にプレーを続けないでください。痛みがひどい場合や改善が見られない場合は、整形外科を受診しましょう。靭帯損傷や半月板損傷の場合、早期の診断と治療がその後の競技復帰に大きく影響します。
2. 体のケア・コンディショニング
ストレッチ
大腿四頭筋の柔軟性向上・・・うつ伏せで片方の足首をつかんでお尻に引き寄せるストレッチなどを念入りに行いましょう。
ハムストリングス、ふくらはぎのストレッチ・・・下半身全体の柔軟性を高めることで、膝への負担を分散させます。
股関節周りのストレッチ・・・股関節の可動域を広げ、膝が内側に入ることを防ぎます。
筋力トレーニング
体幹トレーニング・・・プランクやサイドプランクなどで体幹を強化し、スイングやジャンプ時の安定性を高めましょう。
お尻(臀部)の筋力トレーニング・・・スクワット、ヒップリフト、クラムシェルなどでお尻の筋肉を鍛えることで、股関節の安定性が増し、膝への負担を軽減できます。
ハムストリングスの筋力トレーニング・・・膝の安定に貢献するハムストリングスも強化しましょう。
ウォーミングアップとクールダウン・・・練習や試合前には必ずウォーミングアップを行い、筋肉を温めて可動域を広げましょう。終了後はクールダウンを行い、使った筋肉をゆっくり伸ばして疲労回復を促します。
3. フォームと練習環境の見直し
正しい着地フォームの習得・・・ジャンプの着地時には、膝を柔らかく使い、膝を軽く曲げて衝撃を吸収する意識を持ちましょう。膝が内側に入らないよう、つま先と膝の向きを揃えることも重要です。専門家から指導を受けることも有効です。
練習計画の見直し・・・急激な練習量や強度の増加は避け、段階的に負荷を上げていくようにしましょう。十分な休息日を設け、体の回復を優先することが怪我予防には不可欠です。
シューズとサポーターの活用
適切なシューズ・・・クッション性が高く、足にフィットするバレーボールシューズを選びましょう。古くなったシューズはクッション性が低下しているので、定期的に買い替えることも大切です。
膝サポーター・・・膝の負担軽減や安定性の補助として、適切な膝サポーターやテーピングの活用も有効です。ジャンパー膝であれば膝蓋骨の下を圧迫するバンドタイプ(JKバンドなど)、靭帯の安定にはよりサポート力の高いサポーター(ZKシリーズなど)も検討しましょう。
膝パッド・・・レシーブ時の床との接触による打撲を防ぐために、膝パッドを着用することも重要です。
まとめ
バレーボールで膝の怪我を防ぐためには、日頃からの体づくりと正しいフォームの習得、そして無理のない練習計画が不可欠です。痛みを感じたらすぐに適切な処置をとり、必要であれば専門医の診断を受けましょう。
自分の体の声に耳を傾け、適切なケアを行うことで、バレーボールを長く、そして最高のパフォーマンスで楽しむことができるはずです。